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最高裁判所第一小法廷 昭和25年(オ)275号 判決 1954年1月21日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告理由第一点 売買の当事者間に手附が授受された場合において、特別の意思表示がない限り、民法五五七条に定めている効力、すなわちいわゆる解約手附としての効力を有するものと認むべきである。これと異る効力を有する手附であることを主張せんとする者は、前記特別の意思表示の存することを主張・立証すべき責任があると解するのが相当である。上告人は本件手附の効力として民法五五七条に定める効力とは異るものを主張しているのであるから、原審が上告人主張のような効力を有する手附と認むべき証拠がないとして、これを認めなかつたのは正当であつて、原判決には所論の違法はない。

その余の論旨は、すべて「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」(昭和二五年五月四日法律一三八号)一号乃至三号のいずれにも該当せず、又同法にいわゆる「法令の解釈に関する重要な主張を含む」ものと認められない。(なお前記特例法が違憲でないことについてはすでに大法廷の判例がある。)

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 真野毅 裁判官 斉藤悠輔 裁判官 岩松三郎 裁判官 入江俊郎)

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